③からのつづき あたしのなかに、まだあの夜のあたしがいて、端島銀座のあそこで、鉄平が来るのを待ってる。未練がましいわね。 さて、「あの夜」の秘密も明かされた。 破られていた日記のページも読んだ。そこには、朝子のために「ギヤマン」(舶来もののガラス細工)を自分の手でつくる鉄平の様子が記録されていた。リナが赤ん坊の誠を連れての長崎の病院へ行くのに付き添って行くたびに、そこでギヤマンづくりをしていたのだった。 ギヤマンは、かつて鉄平と朝子が長崎でデートしたときに、朝子が欲しがっていたものだった。ギヤマンの意味を朝子は「ダイヤモンド」と言っていた。 「ダイヤモンドの指輪よりギヤマンがほしか」と。 ギヤ…