日本では2011年の東日本大震災以降から、ダークツーリズムという考え方が、聞かれるようになったと思う。本書はダークツーリズムの研究者である著者が、当概念について手ほどくと共に、自身が各地を巡って、その地の記憶や遺構をダークツーリズムの見方から案内する紀行文の形を取る。 東日本大震災などの災害の爪痕については、当事者達の忘れたいという気持ちと、記憶を継承して忘れまいという気持ちがせめぎ合う。筆者は極力、現状を保存していくことを推奨している。それは事実として、実際のモノが失われると、文書などで残っていても風化して、忘れ去られている現実を目の当たりにしたからだという。 北海道の稚内では、1945年の…