とんでもない映画を観たという衝撃さに打ちのめされたまま映画館を出たのは、久方ぶりのことなのか、それとも初めてのことなのか、今の年代(自身の年齢)に観たからこそなのか、そんなことを思いめぐらすことさえ無意味になってしまうような至高の映画体験。チャップリンの最後の主演作にして、アメリカから事実上の国外追放を烙印された問題作『ニューヨークの王様』(1957年)には、「自由」という意味の真実性をまざまざと見せられたような気がする。映画人としての「自由」、表現者としての「自由」、世界や社会の中に生きる人間としての「自由」、覇権国家のアメリカに対峙する「自由」などといったさまざまな「自由」が幾層にも重なっ…