二十世紀前半の庶民層、それも殆ど最下層の人間の生活場面を舞台にチャップリンは映画を作りましたが、何度か見返して今犇々(ひしひし)と思う事があります。それは、チャップリン扮する完全に貧乏な浮浪者に対する、徹底的な尊厳の無さです。ありつく仕事にせよ、食堂でものを食べる時にせよ、一夜の宿を借りる時にせよ、この浮浪者に誰一人として全く尊厳を認めないのです。この浮浪者は何も他人に軽蔑を向けたり危害を加えようとはしていないのに、寧ろ善意と敬意とをもって接しているのに、その真面目な気持ちが汲まれる事無く完璧に馬鹿にされ、一人の人間としての尊厳、品位を侮辱されるのです。正に野良犬として扱われます。その事を改め…