晴、寒し。雑司が谷を歩いてゐて、厳冬の灰色のなかに、柔らかい陽光に燦然と耀いてゐるのは何かと、傍らに寄つて見てみれば、そはダイヤモンドリリー、桃色のリコリスである。あまりに鮮明で強烈な画であつた。暫く忘れ得そうもない。 『プラダを着た悪魔』、私らしからぬ映画を鑑賞。そもそも映画を観るのが久しぶりである。私もアンドレアと似たやうな仕事をしてゐるので、多少の面白さを覚えた。 だがアンドレアと上司ミランダとの訣別を見て、根本的に相容れぬと思うた。すなはち、西洋人の「個」に、理解が追い付かなくなつた訳だ。 なるほど、私も強烈な自我の所有者であるに違いない。さもなくばもう少し社会と仲良くできるだらう。だ…