2004年作品、日本映画 村上春樹の短編小説「トニー滝谷」の映画化
村上春樹の短編小説 短編集「レキシントンの幽霊」所収
ただし、ショートバージョン、ロングバージョン、ロングバージョン(リライト版)の 3種類の「トニー滝谷」がある。 初出のショートバージョンは「文藝春秋」1990年6月号 ロングバージョンは「村上春樹全作品集<8>短編集<3>」(1991年7月刊) ロングバージョン(リライト版)は「レキシントンの幽霊」(1996年11月刊)に収録されている。
2004年には、市川準監督、宮沢りえ、イッセー尾形主演で映画化。
youtu.be つぐみ牧瀬 里穂Amazon 3/20まで無料公開だそうな。 市川準というのも不思議な監督だったな。 けっこうな経歴をもつし、 同時代人の記憶に残る作品も多々あると思う。 そして彼ならではのタッチも確立しているというのについに巨匠然としたことがなかった。 そういう扱いもあまり記憶にない。 たとえば歴史ものの大作を手掛けるようなことはなかったし。 ふんだんに予算をかけて予告編を日がな一日テレビCMに打つ、というような作品にも縁がなかったようで。 そして初期には必ず「CM出身」というレッテルが付きまとった。 この肩書は観客の方を向いてはいない。 業界人に向けてのレッテルであるとあ…
お題「ゆっくり見たい映画」 学生時代、京都シネマにて何度も観に行った。 DVDも購入した。 何度、観てもイイ。 宮沢りえと尾形イッセー 監督は市川準 原作は村上春樹 音楽は坂本龍一 ナレーションは西島秀俊 個人的にはすべてがいい
1、作品の概要 『レキシントンの幽霊』は1996年に刊行された村上春樹の短編小説集。 『レキシントンの幽霊』『緑色の獣』『沈黙』『氷男』『トニー滝谷』『7番目の男』『めくらやなぎと眠る女』の7篇からなる。 『トニー滝谷』は2005年に市川準監督・脚本で映画化された。 主演はイッセー尾形、宮沢りえ。音楽は坂本龍一が担当した。 2、あらすじ ①『レキシントンの幽霊』 友人のケイシーが住んでいる古い屋敷。 「僕」はロンドンに1週間出張をするケイシーの代わりに留守番をすることに。 最初の晩の夜中に目を覚ました僕は奇妙な物音を耳にする。 ②『緑色の獣』 夫の不在時に地の底から這い出してきて、家の中に侵入…
短編集「レキシントンの幽霊」より、『トニー滝谷』を考察します。不思議なタイトルの本作ですが、映像化もされている作品です。 生まれてすぐに孤独な少年時代を過ごし、最愛の人とめぐり逢うも、再び孤独になることから、「孤独、深い愛、喪失」をテーマとした読み方が主流となっている作品です。
私は年齢的にリアルに村上春樹の処女小説から読むことができた、という他にはないほどの体験を持ちながら同時に共感しないまま現在に至っています。 彼の小説の良さ、というか何を描いているのかがまったく呑み込めないままできたのですがこの映画を観て初めて村上作品がなんなのか少し理解できた気がしました。 とはいえそれが本当に村上春樹なのかといえばそうではないのでしょうけど市川準監督による村上春樹論はとてもわかりやすかった、ということになるのでしょうか。 とても美しい映像でした。市川監督は「風を感じる映画にしよう」と言って作られたそうですがまさしくいつも冷たい空気を感じさせる清廉な作品でした。 ネタバレします…
2021年の8月終わり(または9月はじめごろ)にネット配信で映画『トニー滝谷』を観た記録。 2005年、市川準監督。これを撮った3年後に亡くなっている。 youtu.be ドライブ・マイ・カー』を観た友達が、「妻を亡くした喪失感といえば、同じ村上春樹を原作とした映画『トニー滝谷』を思い出す。大好きな映画」と言っていたので、観てみたくなった。 ちょうど新型コロナウィルス予防ワクチンの接種のあとで、寝込んで何もできないときだったので、短い映画を見るにはちょうどよかった。 観てみた感想。 深い喪失と孤独。それでもつながりを求める人間の弱々しく震える手の愛おしさ。 冒頭の砂で船をつくるトニー少年、その…
先にご紹介した短篇『レキシントンの幽霊』は、村上春樹がアメリカで過ごした4年間の集大成とも言える作品でした。年代物の家具や貴重なレコードが大切に保存された屋敷で暮らす親子が描かれ、彼らの生活には、愛した人を偲びながら生きる知的な寂寥感が漂っています。 今回は、舞台を日本に移した作品をご紹介します。主人公は妻と父親を亡くした男性ですが、彼が抱える寂寥感は『レキシントンの幽霊』の登場人物たちとは異なる独特な感性を宿しています。この短編集の中でも重要な位置を占めているように感じられる本作をご紹介します。 《あらすじ》 トロンボーン奏者の滝谷省三郎の一人息子、トニー滝谷は幼少期から常に孤独を抱えていた…
村上春樹は喪失をテーマに数多くの小説を書いてきた。有名な『ノルウェイの森』もそうだし、『羊をめぐる冒険』や『風の歌を聴け』もそうだ。様々な角度や視点から「喪失」を描いてきた村上春樹だが、「トニー滝谷」という短編は残された「遺品」が存在の不在を訴えかける話だ。残された「モノ」が、失った人の影となって苦しめるのだ。 トニー滝谷について考察や感想を書いていこうと思う。 孤独なトニー滝谷 「トニー滝谷」は『レキシントンの幽霊』という短編集に収録されている。トニー滝谷とは変わった名前だが、主人公の名前だ。トニーと名前にあるが、主人公はハーフではない。ではトニーはなんだと思うかもしれないが、父の滝谷省三郎…
どの表現ジャンルでも、その手法ならではのものを抽出できたものが、優れている。 当然か。 音楽なら、音楽にしか表現できないものをそこに提示すべきだし、聴く側も知らずにそれを求めているはずで。 代用がきくような奴なんか、愛せるわけがない。 もしもその魅力が歌詞のみならば、詩集でことは済んでしまうのだから。 詞と、 その声の変化と、 音楽のブレンドにしか生み出せないものこそを、味わっているのだな。実は。 小説でも、 漫画でも、 あるいは芝居でも、そんな「ならでは」のものに出会えた瞬間こそ、ごちそうだ。 だからあたしゃ原作の単なる映像化に終始しているもの。つまりは、なんだかんだいっても原作を払拭できな…