2004年作品、日本映画 村上春樹の短編小説「トニー滝谷」の映画化
村上春樹の短編小説 短編集「レキシントンの幽霊」所収
ただし、ショートバージョン、ロングバージョン、ロングバージョン(リライト版)の 3種類の「トニー滝谷」がある。 初出のショートバージョンは「文藝春秋」1990年6月号 ロングバージョンは「村上春樹全作品集<8>短編集<3>」(1991年7月刊) ロングバージョン(リライト版)は「レキシントンの幽霊」(1996年11月刊)に収録されている。
2004年には、市川準監督、宮沢りえ、イッセー尾形主演で映画化。
1、作品の概要 『レキシントンの幽霊』は1996年に刊行された村上春樹の短編小説集。 『レキシントンの幽霊』『緑色の獣』『沈黙』『氷男』『トニー滝谷』『7番目の男』『めくらやなぎと眠る女』の7篇からなる。 『トニー滝谷』は2005年に市川準監督・脚本で映画化された。 主演はイッセー尾形、宮沢りえ。音楽は坂本龍一が担当した。 2、あらすじ ①『レキシントンの幽霊』 友人のケイシーが住んでいる古い屋敷。 「僕」はロンドンに1週間出張をするケイシーの代わりに留守番をすることに。 最初の晩の夜中に目を覚ました僕は奇妙な物音を耳にする。 ②『緑色の獣』 夫の不在時に地の底から這い出してきて、家の中に侵入…
短編集「レキシントンの幽霊」より、『トニー滝谷』を考察します。不思議なタイトルの本作ですが、映像化もされている作品です。 生まれてすぐに孤独な少年時代を過ごし、最愛の人とめぐり逢うも、再び孤独になることから、「孤独、深い愛、喪失」をテーマとした読み方が主流となっている作品です。
私は年齢的にリアルに村上春樹の処女小説から読むことができた、という他にはないほどの体験を持ちながら同時に共感しないまま現在に至っています。 彼の小説の良さ、というか何を描いているのかがまったく呑み込めないままできたのですがこの映画を観て初めて村上作品がなんなのか少し理解できた気がしました。 とはいえそれが本当に村上春樹なのかといえばそうではないのでしょうけど市川準監督による村上春樹論はとてもわかりやすかった、ということになるのでしょうか。 とても美しい映像でした。市川監督は「風を感じる映画にしよう」と言って作られたそうですがまさしくいつも冷たい空気を感じさせる清廉な作品でした。 ネタバレします…
2021年の8月終わり(または9月はじめごろ)にネット配信で映画『トニー滝谷』を観た記録。 2005年、市川準監督。これを撮った3年後に亡くなっている。 youtu.be ドライブ・マイ・カー』を観た友達が、「妻を亡くした喪失感といえば、同じ村上春樹を原作とした映画『トニー滝谷』を思い出す。大好きな映画」と言っていたので、観てみたくなった。 ちょうど新型コロナウィルス予防ワクチンの接種のあとで、寝込んで何もできないときだったので、短い映画を見るにはちょうどよかった。 観てみた感想。 深い喪失と孤独。それでもつながりを求める人間の弱々しく震える手の愛おしさ。 冒頭の砂で船をつくるトニー少年、その…
先にご紹介した短篇『レキシントンの幽霊』は、作者の4年間のアメリカ生活を締めくくる作品でした。年代物の家具や価値あるレコード・コレクションが大切に保存された屋敷で、愛した人の面影を偲んで暮らす似たもの親子の話には生活の素朴な美意識や文化人特有の人間性が作り出す孤独が描かれていました。 さて、今回ご紹介する作品は舞台を日本に移して妻と父親を亡くした男が登場します。しかし彼の抱える孤独は、レキシントンの屋敷の住人とは対照的に映ります。そして私にはこの作品がこの短編集のなかで最も重要な位置を占めているように感じるのです。 《あらすじ》 トロンボーン奏者、滝谷省三郎のひとり息子のトニー滝谷は幼い頃から…
村上春樹は喪失をテーマに数多くの小説を書いてきた。有名な『ノルウェイの森』もそうだし、『羊をめぐる冒険』や『風の歌を聴け』もそうだ。様々な角度や視点から「喪失」を描いてきた村上春樹だが、「トニー滝谷」という短編は残された「遺品」が存在の不在を訴えかける話だ。残された「モノ」が、失った人の影となって苦しめるのだ。 トニー滝谷について考察や感想を書いていこうと思う。 孤独なトニー滝谷 「トニー滝谷」は『レキシントンの幽霊』という短編集に収録されている。トニー滝谷とは変わった名前だが、主人公の名前だ。トニーと名前にあるが、主人公はハーフではない。ではトニーはなんだと思うかもしれないが、父の滝谷省三郎…
『映画の採点』シリーズ第21弾です。過去記事はカテゴリー参照にて。 全然溜まらないので別枠にしていた配信映画の採点もまとめる事に。 今回からキャスト欄も記してみました、誰が何出てたとかすぐ忘れちゃうし、非ハリウッドスター達の名前を少しでも覚えられたら。 それとGYAO!のサービス停止を受け寂しくなったので、視聴媒体も可能な範囲で記していきます。 それにしても、ちょっとB級ジャンル映画に偏り過ぎてて、この数ヶ月間心に余裕がなかったのだなと実感。 特定の期間に自分の見た映画ラインナップを振り返ることで、自分が見えてくる、というのもおつなものです。あなたが映画を観てる時、映画もあなたを観ているのだと…
こんにちは、ハクです。 毎週「河北新報夕刊」から 様々な良い映画を毎週で紹介されています、と 私は毎月まとめて、こちらに載させて頂こうと思いました。 "紹介文"も、いい参考文です。あ~読みたい。 ( ´,_ゝ`)プッ それでは、映画の紹介について、 文は「河北新報」文を引用いたします。ご了承ください。 では、ご覧くださいませ。死角に、ご注意を。 ◇ ①『ふがいない僕は空を見た』…幸せの形は人それぞれ www.youtube.com 家庭を持ち、子どもをつくる。それが理想的な幸せの形だろうか?タナダユキ監督「ふがいない僕は空を見た」は、そう問いかけてくる。 斉藤卓巳(永山絢斗)は高校2年生。ア…
日本を代表し、世界中で読まれている村上春樹作品。卓越した比喩と、謎めいたストーリー、ムラカミワールドとしか形容のできない唯一無二の世界観、村上春樹の魅力を語り出すとキリがない。 村上春樹作品が持つ雰囲気は映像化するのが難しいと思うのだが、これまでにいくつか映画化されている。映画によっては忠実に映画化したものと独自の脚色を加えたものがある。村上春樹原作の映画を紹介しよう。 風の歌を聞け 100%の女の子・パン屋襲撃 森の向う側 トニー滝谷 神の子どもたちはみな踊る ノルウェイの森 バーニング ハレナイ・ベイ ドライブ・マイ・カー 番外編 『ドリーミング村上春樹』 番外編 『村上春樹 映画の旅』 …
一条真也です。『村上春樹 映画の旅』早稲田大学坪内博士記念演劇博物館監修(フィルムアート社)を読みました。「早稲田大学演劇博物館 2022年度秋季企画展『村上春樹 映画の旅』」の公式図録です。村上春樹による寄稿「自分自身のための映画」が収録されています。 本書の帯 本書の帯には「小説家 村上春樹の創作活動に映画が与えたもの」として、「通っていた映画館や学生時代に読んでいたシナリオ、エッセイや小説のなかに登場する数々の映画、そして小説を映画化した作品などに冠する豊富な資料を辿りながら、村上文学と映画の世界を旅する展覧会の公式図録。監修 早稲田大学坪内博士記念演劇博物館」「村上春樹書き下ろしエッセ…
"11月の読書メーター読んだ本の数:16読んだページ数:2252ナイス数:1646手ぶくろを買いにの感想私が子どもだった頃は、タヌキやキツネが人を騙す話をなんとなく信じていたが、いまの子どもたちはどうなんでしょうね。この話は好きで絵本を持っていますが、どいかやさんの絵のものが欲しくて、とうとう新品を買うことにしました。黒井健さんや他の方の絵でこのお話を読んだ方にもぜひおすすめしたい一冊です。最後の一文をよむと、これは大人向けのお話かもなといつも思います。読了日:11月03日 著者:新美 南吉なかないでなかないでの感想黒井健さんの描く子どもが愛らしい。読了日:11月05日 著者:あまん きみこキ…
◎新作ロードショー 社長、セクハラです! 《11月2日(水)から 福岡 甘棠館Show劇場ほかで公開》 セクハラ問題が勃発した商社を舞台にした中篇コメディ。(2022年 日本 監督/野田孝則) シグナチャー~日本を世界の銘醸地に~ 《11月4日(金)から 東京 新宿武蔵野館ほかで公開》 日本独自のワイン造りに取り組んできた醸造家・安蔵光弘氏の半生を描く。(2021年 日本 監督/柿崎ゆうじ) 百姓の百の声 《11月5日(土)から 東京 ポレポレ東中野ほかで公開》 自然と向き合い、作物を熟知する百姓たちの叡智を訪ね歩くドキュメンタリー。(2022年 日本 監督/柴田昌平)
引用元:amazon.co.jp 2005年公開の作品 原作は村上春樹「レキシントンの幽霊」の中に収められている「トニー滝谷」という短編を映画化したもの 映画も76分という短さながら、監督に市川準、音楽は坂本龍一という豪華な布陣 心の深いところをあっさりと描く村上春樹独特の世界を、西島秀俊の淡々としたナレーションで導き、その上に坂本龍一のピアノが加わることで、小説の不思議な浮遊感がさらに増している 機械などを正確に描く工業系イラストレーターとして成功したトニー滝谷(イッセー尾形) 父親の正三郎(イッセー尾形:二役)はプロのトロンボーン奏者で、戦時中は上海のナイトクラブで活躍していたという 世話…
10月4日(火) 時には黙っておくこともある 4時起きで、添削の仕事を2時間分。会社でもそうなんだけど、仕事を始める前に「僕はサイコパス」って心の中で唱えてから始めるのがルーティン(※ネタじゃなくて本当です)。自分で決めた仕事のクオリティをクリアすることに集中する。それが他人からどう思われるかは、仕事をやってる途中にはあんまり気にしてもしょうがない。独りよがりにならないように、時々は方針を見直すのも必要だろうけど、「独りよがりになってないかどうか」だって結局は自分で判断するしかない。 息子の机に、書き終わった作文の宿題が置いてあって、チラ見。くら寿司に行ったこと、特にいくらがおいしかったこと、…
こんにちは。お疲れさまです。 ちょっとした出会いをきっかけに、何かをしてみようと思ったり、その何かが他の何かにつながっていくようなこと、ありませんか? たとえば、本屋さんで手にした雑誌のコラムで言及されていた作品が気になって、読んでみるとか…… って、たとえ話というより、そのままなんですが…… 先日*1、父と散歩に出かけました。そのとき、本屋さんに寄って、そこで見かけたのが「月刊ジャズ批評228」なんとなくパラっと眺めていたら、村上春樹さんの「人喰い猫」と映画『アリスの恋』について書かれているコラムがありました。部分的に引用されていたせいで、かえって気になってしまいます。たぶん、わたしはそれを…
はじめに この記事では、僕が特に好きな実写映画を紹介しています。 各作品にリンクを貼っているFilmarksで視聴できるサービスを確認できます(視聴できるサービスがあるのに載っていないこともあります) 初心者におすすめの作品(五十音順) Vフォー・ヴェンデッタ 基本情報 時間:132分公開:2006年製作:イギリス 他言語:英語分類:サスペンス あらすじ 独裁者『アダム・サトラー』率いるノースファイアー党によって統治されているイギリス。夜間外出禁止令を破って外出した、国営放送BTNに勤務する『イヴィー・ハモンド』は、秘密警察に見つかり乱暴されそうになったところを、『V』と名乗るガイ・フォークス…
2021年の日本のドラマ映画。 原作が村上春樹で監督が濱口竜介。 アメリカのアカデミー賞で国際長編映画賞とは従来の名称でアカデミー外国映画賞だそう、それを受賞しています。 村上春樹の小説は昔は謎を謎のまま終わらせる作風が多かったけど、『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』とかから謎を最後には解く感じで謎解きも意味していて読みごたえがある感じに変化していったが、このドライブマイカーも妻の謎を最後には解いていた感じだった。 『ゴドーを待ちながら』とか『ワーニャ伯父さん』とか舞台劇と映画の中の主人公の心がマッチしていて何とも言えなかった。 岡田将生の車の中での告白のシーンがすごく良かった。それ…
そうだ、村上春樹を読もう! 職業としての小説家 (新潮文庫) 作者:春樹, 村上 新潮社 Amazon 現代日本文学を代表する作家・村上春樹。その人気は日本にとどまらず、世界中で愛されている。 洒脱な表現や比喩と、巧みなストーリーテリング、魅力的な謎解き要素など魅力が詰まった村上春樹作品。僕も高校生の頃から村上春樹作品の魅力に取りつかれ、大体の作品は読んできた。 最近ではノーベル文学賞の候補だとかなんだかで騒がれたりと話題が絶えない村上春樹だが、読んだことがない人も多いんじゃないだろうか。これから村上春樹を読むという人のために、初心者におすすめの短編小説を紹介したい。 いきなり長編小説だとハー…
トニー滝谷 プレミアム・エディション [DVD] イッセー尾形 Amazon 『トニー滝谷』という映画がある。 原作は村上春樹の短編小説で、『レキシントンの幽霊』という短編集に収録されている。 レキシントンの幽霊 (文春文庫) 作者:村上春樹 文藝春秋 Amazon 主人公の名前はトニー滝谷で、この一風変わった名前は、彼の父親が世話になったアメリカ人の大佐が付けたものだ。 父親はジャズマンで家を空けることが多く、母親はすでに死んでいたので、トニー滝谷は基本的には1人で暮らすようになる。特に寂しいとも思わなかった。それは彼にとってごく当たり前の生活だったのだ。 トニー滝谷は機械の精細な絵を描くの…
山根先生が、ご著書を恵投くださいました。どうもありがとうございます。 山根由美恵『村上春樹 〈物語〉の行方—サバルタン・イグザイル・トラウマ』ひつじ書房 村上春樹についての論文数世界一の記録をもたれる山根先生の二冊目のモノグラフです。 ご恵投、どうもありがとうございました。 目次 第一部 「イグザイル」(故郷離脱)期の文学−一九八八〜一九九六 第一章 停滞と復活−「イグザイル」の彷徨い 第一節 「イグザイル」の彷徨い――「ダンス・ダンス・ダンス」 第二節 作家としての復活――「TVピープル」 第二章 「拒む女」たち――「サバルタン」への眼差し1 第一節 「拒む女」の闇――「我らの時代のフォーク…