話しかけられること自体は珍しいことではなかった。そういう役割のNPCが配置されていることもあれば、男を誘うことで金を稼ぎたい女もいる、特に非合法の仮想空間にいれば日常茶飯事だ。 オレはいくつか質問をしてNPCではないことを確認すると、隣の席を許した。現実世界での性別や、プロか素人かはどうでもよかった。これまでのどの女をも圧倒する造形美、物腰、声、拒否する理由を見つける方が難しかった。 ジンが好きなの ー そういってマティーニに口づけし、湿った唇を桃のような色をした舌ですっと舐める。舐める音のオレの耳に送りつけられ、強制的に再生される。この手の女には注意が必要だ。朦朧とする男を相手にハックを掛け…