他方において、田辺元の批判を受けた西田もまた、「場所」における歴史行為について深めたのであろう。いわゆる「西田哲学における行為・制作の論」(黒田)に示されているように。 哲学することは、「ことばに担わされた概念」を用いて展開するほかはない。規定しようにも規定できないものを規定してしまうところに、西田の特色がある。それが彼の思索の最大の特徴である。それはたとえば「未だ主もなく客もない、知識と其対象とが全く同一で居る」「此の色、此音はなんであるという判断が加はらない前を言うのである」、と西田は「純粋経験」を説明している。そして、この「純粋経験」を事実や実在というものが与えられる最も直接的な「場所」…