宮沢賢治は自作の口語詩について、生涯の詩の友であった森佐一宛の手紙の中で「これらはみんな到底詩ではありません。……いろいろな条件の下で書き取って置く、ほんの粗硬な心象のスケッチでしかありません」と述べています。その他の手紙やメモでも、口語詩と初期の童話は「心象スケッチ」であると強調しています。晩年の文語詩は「詩」と呼んだのに対し、口語詩ではなぜそれほど「心象スケッチ」にこだわったのでしょうか。彼の作品に、他の近代の口語詩と比べてどのような差異があるのかを私なりに考えてみたところ、6つの特徴があることに気づきました。 ①現在形で書かれている 妹の死を看取った一日を記した「永訣の朝」は、次の言葉で…