「タイムスリップ現象」とは精神科医の杉山登志郎が1994年に命名した言葉で自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorder;ASD)の児童,成人が遙か昔のことを突然に想起し,あたかもつい先ほどのことのように感じるという現象である(杉山,2016)。杉山によれば,1)もともと優れた記憶能力を持つ,知的に高い,しかし,不安定な自閉症の症例にしばしば見られ,2)喜び,怒り,悲しみなどの現在の感情的な体験を引き金として,過去の同様な感情の記憶や出来事が想起され,3)その過去の記憶を現在もしくはつい最近の体験であるかのように扱うものであり,4)その記憶体験は普通児における一般に想起す…