自閉スペクトラム症(ASD)の特性の一つとして感覚過敏がある。特定の感覚の刺激を過剰に強く感じてしまうことである。賢治はとくに「匂い」に過敏であると思われる。医師で親友でもある佐藤隆房(2000)の著書に花巻農学校教師時代の感覚過敏に関するエピソードが以下のように記載されている。 生徒を伴って山に行きます。賢治さんは 「炭を焼いている臭いがする。」と言う。しかし何の香りも生徒には感じられません。 「そうですか。」と答えていくうちに山の中の炭焼窯に到着します。 野路を行く。 「杏の花の香りがすると言う。」 しばらくすると白い杏の花を見る。生徒は宮沢先生の感覚の鋭敏さのなみなみでないのに驚きます。…