先にご紹介した「セレナード 第7番 ニ長調 K.250(248b) "ハフナー"」に並ぶ、このジャンルにおけるモーツァルトの大きな作品として、「第9番 ニ長調 K.320 "ポストホルン"」があります。 ポストホルンとは、モーツァルトの時代、郵便馬車がその出発や到着を知らせるために吹き鳴らした楽器で、その響きは聞く人の心に旅立ちや別れといった情趣を喚起する力を具えています。 そして、セレナード第9番が「ポストホルン」と呼ばれるのは、もちろんこの楽器が効果的に用いられているからに他なりません。 さて、ハフナー・セレナードについてはその作曲契機がはっきりしているのに対し、今回ご紹介するポストホルン…