今 東光(1898 - 1977) 博多の料亭に女丈夫の仲居がいた。 「東光先生、なにか字を書いてくださいな」 「いいよ、紙に書いても面白くねえや、キミのパンティーになら、書いてやろう」 断ろうと思ってである。 「いいわよ、だれか硯箱をお願い」 仲居は着物の裾をからげて、下半身を露わにし始めた。 ふにゃふにゃして書けたもんじゃない。東光僧正、ウエストから左手を差入れ、それを下敷きにして肝心の処へ「関」と書いた。 玄関、関所。大切な場所へのおごそかな入口という意味である。 半世紀後の今も、博多のどこかでどなたかが、この女性下着を保管なさっていることだろうが、なろうことなら一見に及びたいものだ。 …