・パトラシエ(パトラッシュ)の胸に大きな愛が目ざめた。それは命あるかぎり一度もゆるがなかった。しかしパトラシエは犬なので、ただ、恩に深く感じていた。 ・‥犬はあまりの悲しさにそのそばに横たわって死んでしまいたかったが、子供が生きていて、自分、パトラシエを必要とする間は負けて倒れてはならなかったのだ。 ・彼は自分が路傍の溝で病気で死にかかっているのを老人と子供に発見されたあの過ぎさった昔を忘れなかった。 ・この世に生きながらえるよりもふたりにとって死のほうが情け深かった。愛には報いず、信じる心にはその信念の実現をみせようとしない世界から、死は忠実な愛をいだいたままの犬と、信じる清い心のままの少年…