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ポケベル入力

(コンピュータ)
ぽけべるにゅうりょく

携帯電話などで文字を入力する方式の1つ。1994年生まれ*1 *2である。

概要

名前が表すとおり、もともとは文字表示機能が追加されたポケットベルに対して、プッシュトーンを発生できる電話を用いて、文字を送出するために考案された方法である*3
プッシュボタン式電話機と同じキー配列のボタンインターフェースが携帯電話でも主流となったため、ポケットベルが廃れた現在でも入力法そのものは利用され続けている。
ほかの呼び名としては、ベル打ち2タッチ入力ポケベル打ちなどがある。入力方法の主流である「かなめくり入力」に次ぐ搭載率であるが、全ての機種でポケベル入力が出来るわけではない。

使うために必要な基礎知識

以下に表として示すとおり、「ボタンを2回押して、清音の大書きかなを1文字示す」方式である*4。まれに「ボタンを2回押して、すべてのかなを1文字示す」ものとして紹介されがちなものの、(専用のソフトウェアを導入していない)2008年末時点の商用端末では「濁音・半濁音・小書き文字*5」のすべてを含めた打ち分けが実現されていないため、後者の表現は誤りである。
「英数/かな」では入力モードを区別せず、「大文字/小文字」で入力モードを区別する*6。そのため、カナであっても小文字を入力するためにはモード切替を必要とし、英字であっても大文字を入力するためにはモード切替を必要としない。


かなめくり入力と同じく、濁音・半濁音を直接入力することは出来ない*7。濁点・半濁点を後置きする必要があるが、旧来からある2タッチでの濁点・半濁点入力になじみのないユーザ向けに、かなめくり入力とおなじ「*」キーを使った濁点・半濁点入力をサポートする機種もある*8。そのため、濁音カナの入力は機種により3〜4打鍵となる*9
入力効率はかなめくり入力と同等の2.2〜2.5打鍵/かなであるが、「目視確認を前提とした」かなめくり入力とは異なり、ポケベル入力は綴りと文字が常に対応している(同じ行のかなの連続──たとえば「あい」など──の入力時であっても、ソフトウェア補助や、あるいは矢印キーなどの操作を必要としない)ため、安定した手順で文字入力することができるというメリットがある。


見方を変えると、ポケベル入力は「行」と「段」を指定して「50音順を含めた文字表から文字を拾う」方式である。
清音文字を拾うために「2:か行」→「1:あ段」=「21:か」などと操作するという考え方は、パソコンなどにおける「ローマ字入力」の考え方に近い。
一方で、濁点や半濁点を後から付け足すという考え方は、パソコンなどにおける「ひらがな入力」の考え方に近い。
濁点や半濁点を後から付け足すという操作は「ポケベル入力&かなめくり入力に共通」である一方で、「2:か行」→「1:あ段」=「21:か」などと操作するという考え方は「ポケベル入力に特有の操作」である。
そのため、「かなめくり入力に慣れた」ユーザであって、かつ「ローマ字入力のように入力したい」ユーザにとって、ポケベル入力は有効な選択肢となりうる。


ポケベル入力のうち、機種に依存せずに入力できる文字*10を以下に示す。

大文字モード

(例:「う」と入力するためには、1→3の順でボタンを押す。)

1:【 あ】 2:【 か】 3:【 さ】
           
4:【 た】 5:【 な】 6:【 は】
 
             
7:【 ま】 8:【 や】 9:【 ら】
       
               
0:【 わ】
           
               
           
               

小文字モード

(例:「ぉ」と入力するためには、1→5の順でボタンを押す。)

1:【 ぁ】 2:【 か】 3:【 さ】
           
4:【 た】 5:【 な】 6:【 は】
 
             
7:【 ま】 8:【 ゃ】 9:【 ら】
       
               
0:【 わ】
           
               
           
               

手順が統一されていない現実

小文字・濁点などは別途入力するが、それらの入力方法はメーカーによって異なる。
特定のキーで「大文字←→小文字」のモードを切り替えてから文字を入力する機種*11がある一方で、一旦入力した文字を後から「大文字→小文字」に変換する機種*12も存在する。
また、文の区切りに用いる「読点(、)・句点(。)」の入力方法も、機種によりまちまちである。
中には、入力ガイドの追加などを含めたニコタッチのような例も存在する。
このような改善案を含めて、メーカーごとに「同じポケベル入力であっても細かな使い勝手が異なる」ことがあり、入力方法は統一されていない。


入力方法の不統一はかなめくり入力でも存在するが、ポケベル入力には「2打鍵で文字が確定する」という特徴があるため、一度特定のポケベル配列に慣れるとほかのポケベル配列を覚えなおすのは難しい。

そのため、ケータイを変える際に同一メーカーの端末を採用し続けなければならない理由のひとつとなることがある。

この入力法が存在し続ける意義

かなめくり入力に逆トグルが実装され、また予測入力が普及したことなども影響し、速度面のメリットは薄れてきている感もあるが、打鍵数が1文字2タッチであるためリズムが乱れにくいという良さがある。

新たな挑戦

2006年8月

[[W-ZERO3[es] ]]用のctrlswapminiというツールが登場し、ポケベル入力などを改造できるようになった。
メーカーごとの差異を実装可能な範囲で再現するのみではなく、既にいくつかの新しいキーマップ提案が公開され始めている。
http://hp.vector.co.jp/authors/VA004474/wince/keymap.html
従来のポケベル入力は「ボタンを2回押して、清音の大書きかなを1文字示す」方式であり、「ボタンを2回押して、すべてのかなを1文字示す」ことは出来なかった(このため、乱暴にポケベル入力のメリットを示そうとした「ボタン2回でカナを出せる」という説明が「嘘」になっていた)が、ctrlswapmini用の新しいキーマップ提案には、「濁点付きかな」「半濁点付きかな」「小書きかな」を含めて「ボタンを2回押して、すべてのかなを1文字示す」キーマップ提案なども登場した。

2007年1月

NTT DoCoMo 向けのコンセプトモデルとして発表された「FOMA D800iDS」では、【2タッチ文字入力】という50音順の文字入力方法が採用されている。これは、ポケベル入力と似た考え方で文字入力をする方式である。
http://www.nttdocomo.co.jp/product/concept_model/d800ids/
http://www.fomasquare.com/special/800ds/
ポケベル入力は、文字入力のモードが「英数+カナの大文字モード」と「英数+カナの小文字モード」に分かれていて、文字の大きさを変えるたびに特定の操作を必要とした*13
ポケベル入力を暗記して使いこなす場合には、上記の特徴は覚えることを少なくするために役立つ。しかし、「FOMA D800iDS」のボタンはタッチスクリーンであり、利用者が入力法を暗記する必要はない。
また、文章を入力する場合には「大きなカナと英大文字のみを交ぜて書く・小さなカナと英小文字のみを交ぜて書く」機会よりも、「大きなカナと小さなカナのみを交ぜて書く・英大文字と英小文字のみを交ぜて書く」機会のほうが多いため、切り替え操作は後者の場合に行うようにするほうが、切り替え操作を少なくすることが出来る。
後者の入力方法を採用する場合、清音文字に対して後から濁点(゛)や半濁点(゜)を後から付加する方法のみではなく、濁音文字や半濁音文字を直接入力できるようにすることも可能になる*14
半濁点(゜)を入力する機会は比較的少ないが、濁点(゛)を入力する機会は比較的多い*15ため、少なくとも濁点(゛)を使わず直接濁音を入力できれば、より少ない手順で文字を入力することができると考えられる。
http://www.ykanda.jp/input/jis/jis14.jpg
「FOMA D800iDS」では、濁点(゛)は別途打つ必要はない(濁音が選択肢として表示される)が、半濁点(゜)は別途打つ(清音の後に半濁点を打つ)仕様となっている。
濁音は直接指定でき、半濁点は別途打つという仕様は、TRONプロジェクトの成果物である「TRONキーボード」「μTRONキーボード」などを用いた、いわゆる「TRONかな入力法」とよく似ている。
http://www.asahi-net.or.jp/~EZ3K-MSYM/charsets/keymap.htm#tron

2009年1月

最新モデルとして販売される「ケータイ」のポケベル入力について、かなめくり入力の方法を流用した「【*】キーによって【゛(濁点)】と【゜(半濁点)】を打てるようにする」規則を追加する例が、ほぼ一般化した。
前出の通り、濁点(゛)を入力する機会は、ひらがなにおける最高出現頻度を持つ「い」よりも倍ほど高いため、こういった超高頻度の定義を「ほぼ全ての端末で、*キーの一押しにより」指定できることによる効果は大きい。

脚注

*1:東京テレメッセージによるサービス開始が最も早い。 http://www.andrew.ac.jp/sociology/teachers/harada/students/1sr1323.html を参照のこと。

*2:これ以前に1991年ごろから、「番号で指定した定型文を送出するサービス」http://www.itmedia.co.jp/enterprise/articles/0703/27/news003_2.htmlと「パソコン経由の自由文サービス」 http://www.itmedia.co.jp/enterprise/articles/0703/29/news006.html が行われていた。

*3:入力用の機器(手元電話機のプッシュボタン)と、表示用の機器(相手先のポケットベル端末)が、物理的に離れているという特徴がある。現在の電話機では、入力と表示を両方ともに、手元電話機側で行う。

*4:このため、かなめくり入力とは異なり、「あ・か・さ・た・な・は・ま・や・ら・わ」の10字についても、2回ボタンを押す必要がある。一方でかなめくり入力には、「同じ行を続ける場合には、文字キーよりも上方にあるカーソルキーを使う」か、あるいは「指定時間だけ待って、自動でカーソルが送られるまで待つ」などする必要があるため、ここに挙げた10字がかなめくり入力では常に入力しやすいとは限らない。要は、「どちらの入力方式が自分にとって合うか」によって変わる。

*5:いずれも1文字で示されるものである。

*6:この仕掛けは「ポケベル入力変換テーブル」に由来するものである。現実には、入力モードを「英数/かな」で区別することを前提としたキー入力変換テーブルを採用することも、技術的には可能である。

*7:ただし、「2タッチ入力」を名乗る機種の中には、FOMA D800iDSのような「濁音を直接入力できる」例外的な機種も存在する。

*8:このため、「が・ざ・だ・ば」の4字は、例外なくかなめくり入力よりも入力に必要な打鍵数が増える。

*9:濁点「゛」の入力を「*」一回で行える場合に限り、濁音の入力はキーを3回叩くのみで済む。

*10:機種により違いがある定義(濁点・半濁点など)はすべて省いた。

*11:例としてはPanasonic/KX-HV210など。

*12:例としてはSANYO/WX310SAなど。

*13:ポケットベル端末側に文字を送る場合、手元の電話機では入力した文字を確認できないため、こういった仕様になった可能性がある。つまりこの場合、文字の大きさを変更する操作に失敗しても、文字は可読性があるまま(大文字か小文字かという点のみが異なる状態で、とりあえずは)伝送できるのである。

*14:ひらがなのうち、旧かなを除いて一般に使われる文字は【あぁいぃうぅヴえぇおぉかがきぎくぐけげこごさざしじすずせぜそぞただちぢつづってでとどなにぬねのはばぱひびぴふぶぷへべぺほぼぽまみむめもやゃゆゅよょらりるれろわをん】の81文字である。これに句点・読点・感嘆符・疑問符・旧かななどを足しても100文字程度である。これらの文字をすべて同じタッチ数で入力するという発想は古くからあり、たとえば1979年に開発された日本語電子タイプライタ「OASYS」の入力法である親指シフト方式では、文字キー31個+シフトキー2個を組み合わせることで、90個のカナを同じタッチ数(親指シフト方式では1タッチ)で入力する方式を採用していた。

*15:JIS X 6004の設計時資料によれば、濁点をひらがなから分離した場合の出現頻度は、おおむね10%近くである。これは、ひらがなで最も出現頻度が高い「い(約5%)」よりもはるかに高い。

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