1996年10月7日 朝日新聞夕刊 川柳作家の大西泰世さん 17字の死とエロス(人間往来) 身を反らすたびにあやめの咲きにけり 真ん中を蝋(ろう)が流れるまっぴるま 月光に泡立つ死者の未来なり なまめかしさが漂う一方、死を意識させる句の群れがある。川柳作家、大西泰世さん(四七)=写真=の句集『こいびとになってくださいますか』(立風書房)がこの夏、宮城県中新田町の第一回俳句大賞に選ばれた。選考委員の俳人石原八束氏は「死からはじまってエロスの世界を引き出す。迫力がある」と評した。 兵庫県姫路市で生まれた。二歳で父を亡くし、「溺愛(できあい)してくれた」祖父も十一歳のとき、亡くなる。死をイメージした…