認知症というのは、一般的には高齢になるにつれ、記憶力や見当識、認知機能などが低下し、日常生活などに支障が出てくる状態のことを言います。ただその認知症の型というのも複数あり、少しづつ症状が違います。 その症状の出方によっては、遺言書が作成できないものもあるので注意が必要です。
作った遺言書が有効になるためには、遺言書を作成する段階で「遺言能力」を持っている必要があります。遺言能力というのは、遺言というものがなんであるのかをしっかり理解し、遺言の結果、つまり誰に何をあげるのかという事がわかっていることをいいます。 遺言者の遺言するぞという意思があることは、もちろん必要ですし、一番大事です。
遺言書の有効無効が争われるケースでよくあるのが、遺言者が遺言作成時 既に 認知症で遺言能力が無かったとされることです。 認知症の危険度が65歳以上になるとぐっと上がるため、そろそろ遺言書でも作ろうかしらなんて言う年代と合致します。一部では65歳以上の5人に一人が認知症などと言われることも有ります。 遺言能力と認知症というテーマに関しては、今後さらに重要になってくると思われます。
③遺言書は公明正大にみんなに宣言して作る人は少数だと思いますが、遺言能力がうたがわれたり、誰かに強制されて作らされたというような疑惑が湧かないように作る必要があります。 自筆証書遺言なら作成時の動画を残したり、できれば公正証書遺言で公証人、証人をまじえて作成することをお勧めします。
こういった場合遺留分を侵害していないか?の配慮は必要かと思います。遺留分を侵害された子供から遺留分侵害額請求をされる可能性があるからです。遺産分割協議で揉めるというわけではないですが、親族間でこういった請求が行われたりするとやはりぎくしゃくする元になってしまいます。
②遺言書の内容ですが、基本は法定相続分をベースに、財産を特定していくというのがいいかと思います。ただ不動産や株など現時点で評価額を決めるのも難しいものなどもあるかと思うのであくまで目安となりますが。 とはいって遺言書を作る限りは、自分の意思を反映させたいと思うものです。世話になっている長女には多めに残してあげたいとか世の中のために一部は寄付したいとかです。
また遺言書で作成した段階では元気な場合であっても万が一ということあり、順序が変わることがあります。その時のために予備的遺言を用意しておくという事も大事です。つまり遺言者よりも先に子供たちが亡くなってしまったような場合その部分の行き先を決めておかないとその部分だけのために法定相続人が集まって遺産分割協議をしなければならなくなります。
遺言書は先に述べたような紛争のタネを極力排除したうえで、作成いただくと効果的かと思いますが、その際注意いただきたい点をあげさせていただきたいと思います。 ①遺言書の内容は、曖昧な点を極力排除し明確にだれが何を相続するのか記載すべきだと思います。また財産の全てを対象にというのも必要です。ここが曖昧だと遺産分割協議の必要性がでて、どんな内容であろうと紛争の原因になる場合があります。たとえ均一割にしても自分には多くもらう理由があるとおもう人が出てくるからです。
高齢の親が多額の財産を現金で置いたり、隠しこんだりということも起こります。これも自分の老後の不安から「財産だけが頼りだ」という考えから出る行動です。 ただ残された者から見るとその場所がわからなくなったり、思ったよりなかったりすると、兄弟の誰かが盗んだんじゃないかと思ったりすることも有ります。遺留分侵害にも関わってきますが、誰もが明確にわからなくなっている事態なので、さらに泥沼紛争に陥ります。
また高齢期に入ってくると自分の老後が不安になり、子供が複数いる場合はそれぞれに頼ろうとします。その子供ごとに「お前だけが頼りだ、財産はお前に任したい」などと言ったりすることもあり、そのうえ別の子供の悪口などを言い始めたりします。こうなってくると子供間で信頼感がなくなり、相続時も揉めやすい環境が整ってしまいます。 こんな状況で作られた遺言だとすると必ず子供としては、「自分の親がこんな遺言を作るはずがない、無理やり誰かに書かされたんだ」というような疑心暗鬼につながります。