最近、ドキュメンタリー作家・沢木耕太郎さんの作品に触れ、鮮やかで静謐なストーリー展開に感激しています。業務において自分史を手掛ける私は、事実と表現の間の距離感を、なるべく密にしようとしていました。というのは、それがお客様に喜ばれるからです。しかし、沢木さんの淡々とした視点と語り口は、自分史の手法として、まずお客様におすすめすべきものだと考えるに至っています。 「この話は、事実である」 そんな風に前置きされた瞬間、人はぐっと話に引き込まれます。フィクションでは味わえないリアリティが、ドキュメンタリーの文章にはあります。 では、ドキュメンタリーの筆法とは何でしょうか。それは、事実を忠実に描きながら…