村上春樹『回転木馬のデッド・ヒート』講談社(1985.10.15第一刷発行)より、もくじ 亡き王女のためのパヴァーヌ 「今は亡き王女のための」。タイトルはモーリス・ラヴェルの『亡き王女のためのパヴァーヌ』から採ったものだろう。ピアノ曲、管弦楽曲。「亡き」とは失われた王女の宮廷のこと。字義の穿鑿になるが、王女が死んだわけではない。 暴かれる「読み方」 前三作までは「物語」を回復させようという目論見の「物語」であった。 本作はこれに比して言えば「小説」のような「小説」ということになりそうだ。 「僕」の語る話であり、ご丁寧なことにこの「僕」は「村上さん」と言うらしい。もちろん、「僕」が「村上さん」だ…