35歳になった春、彼は自分が既に人生の折りかえし点を曲がってしまったことを確認した。 村上春樹『回転木馬のデッド・ヒート』「プールサイド」(講談社文庫、2022年)p.62 回転木馬のデッド・ヒート (講談社文庫) 作者:村上春樹 講談社 Amazon 大学時代の友人たちと新年会を催していたときの話だ。市ヶ谷にあるステーキ屋で、チリコンカーンをあてにバーボンハイボールを飲み、締めにリブロースステーキを懸命にナイフで切りながらモグモグ食べていた。 「さすがに20代の頃と違ってあんまり食べられなくなってきたな」 と皆で苦笑いしていると、先輩がポツリとつぶやいた。 「頑張らないとな」 「35歳限界説…