これからは弁当が要るな、と母が言うので、まだわからない、断って帰ってくるかも知れぬからと、幸平は一掴みのパンだけをバッグに入れて出かけた。兄の洋平は隔日なので毎日ではないが老齢の母を一人にすることになった。心配だったが、それはもうどこで雇ってもらっても同じことだった。 だがそんな日々を、いったい何年続けられるだろうか。例え雇われてもそのことを考えると気が重い。母を一人にできるのは、甘く見ても精々三年くらいだろうか。その後はどうする。 しかし今は今だ。今のことだけを考えるしかない。自分が外に出ている間は火を使わぬようにして、とにかく誰が来ても玄関を開けるなと、それだけ強く言い聞かせた。母は黙って…