恩師が本を出した。そのブックイベントが北加賀屋であり、帰りに腹が減ったので駅前の喫茶「蘭」に入った。 蘭。名前からして古風で、花のよう。字がいい。素晴らしい字面だ。柔らかくて、誇り高い。外観はギリシャ神殿ふう。柱が二本、白く立っていて、気取ったところが大阪らしくて好きだ。 中に入ると、昭和の劇場のような光景が広がる。高い天井にシャンデリア、壁のステンドグラスは、どこか物語の中の風景のようで、窓辺の光が赤絨毯をやわらかく撫でている。椅子の背もたれには手彫りの模様。柱の飾りはギリシャ風。 こういう店を「趣がある」と言うのは簡単だが、そうではない。時代に流されず、誰かの手で磨かれ、整えられてきた空間…