古寺の山門に佇む 1 古刹へ参ずる9月半ばの或日。彼岸の頃。うだる夏が終わり、風が涼しさの中に冷たさを少し忍ばせていた。黄金に実った稲穂が少しずつ刈り取られて、賑やかだった田園風景はモザイク状に冬のさみしさも内包しつつある。アキアカネが舞って空は秋晴れ。中空に浮かぶ雲はゆるやかな鱗。 苔むした石段を登る。と、山門前閻魔座る。・・いや長く風雪にさらされとうに形(なり)を失ったその像を見て、はたしてこれを閻魔と認めることが出来ようか?・・と問われれば、なるほど強くはうなずけないが・・しかし右に杓子を持ちそしてその冠の形などを見るに、やはりこれは閻魔ではないだろうかと考えるのだ。 門前に閻魔。まさか…