はじめに 今年の六月大歌舞伎が開幕するまでに、色々あった。それはもう、色々あった。 まず4月。演目が発表されてからわずか約2週間後、市川左團次丈が急逝された。菊五郎さんと予定されていた夕顔棚は幻となり、私はしばらく涙にくれた。 そして5月。詳しい事情は日本中の聞くところであるので割愛するが、梨園を揺るがす出来事があった。 もう、六月大歌舞伎は呪われでもしているのではないか、とまで思ってしまうほどである。昼の部の開幕を心から心配した。私の目当ては、贔屓の出る夜の部『義経千本桜』で、当初は夜の部のみを観劇する予定であったが、こう重なってはオタクとして居ても立ってもいられない。再開された幕見を総動員…