小説家(1904年(明治37年)〜1976年(昭和51年)11月)本名稲並昌幸。東京神田生まれ。 ショートショートの先駆として名高い。江戸川乱歩から「人生の怪奇を宝石のように拾い歩く詩人」と評される。戦前は主に怪奇小説の分野で絶賛を博した。 戦後は捕物帖のみを書くようになったので、そちらの方面でも有名。 城左門として詩人の顔も持つ。
怪奇製造人(探偵クラブ) 怪奇探偵小説傑作選〈4〉城昌幸集―みすてりい (ちくま文庫)
探偵小説・大衆小説作家にして詩人であった城昌幸の怪奇幻想掌編集 『みすてりい』『のすたるじあ』を読了。 ネタバレを避けつつ、ふわっと全編についてメモをば。 みすてりい (創元推理文庫) 作者:城 昌幸 東京創元社 Amazon のすたるじあ (創元推理文庫) 作者:城 昌幸 東京創元社 Amazon みすてりい Ⅰ みすてりい 艶隠者 その夜 ママゴト 古い長持 根の無い話 波の音 猟銃 その家 道化役 スタイリスト 幻想唐艸 絶壁 花結び 猟奇商人 白い糸杉 殺人婬楽 その暴風雨[あらし] 怪奇製造人 都会の神秘 夜の街 死人の手紙 模型 老衰 人花 不思議 ヂャマイカ氏の実験 不可知論 中…
のすたるじあ (創元推理文庫) 作者:城 昌幸 東京創元社 Amazon 『のすたるじあ』城昌幸著を読む。 手替え品替え、さまざまな味のする掌編小説集。モダンさで括れるが、どこかノスタルジックさが漂っている。奇をてらう話も好きなのだが、じんとさせられる話もいいのだ。これは意外だった。 またまた述べるが、「短篇は盆栽」。いい枝ぶりの松の巨木かと思いきや、実は、それは丹精込められた一鉢の盆栽。マクロコスモス=ミクロコスモス文字数は少ないが、長篇小説に匹敵するような世界を内在している。 解説で星新一は、こう評している。「生きてきたこと、生きていることの不確実性とでもいったものがそこにある。じわっとし…
みすてりい (創元推理文庫) 作者:城 昌幸 東京創元社 Amazon 『みすてりい』城昌幸著を読む。 掌篇、いわゆるショートショートの先駆けだったそうだ。『新青年』が発表の場というだけあって、テイストは怪奇・幻想なんだけど、洒落ていて、モダン、都会的。散文詩みたいな作品もあったが、作者が「日夏耿之介と西條八十」を師匠に当初、詩作をしていたことを知り、納得。 江戸川乱歩が作者を「人生の怪奇を宝石のように拾い歩く詩人」と述べていたそうだが、いやはや、ぴったり。それにしてもなんて素敵なフレーズなんだろう。 長山靖生の解説によると、「城はポオやオスカー・ワイルド、リラダンを好んだ。―略―城昌幸には、…
1952年(昭27)3月~1953年(昭28)2月 雑誌「読切俱楽部」連載 1958年(昭33)同光社出版刊。「手妻はだし」「天狗隠し」「名指し幽霊」など12篇所収。 城昌幸の代名詞ともなった『若さま侍捕物手帖』のシリーズは戦前の1939年(昭16)に第1作を書いてから足かけ30年近くまで長短交えて約300篇を数えるという。戦後は雑誌「読切倶楽部」に4年間ほど連載したが、その最初の12篇が単行本として出されたのが本書である。 人気を博したシリーズ物の強みは、人物設定と状況設定の雛形化(テンプレート化と言った方がわかりやすいかも)にある。ここでは、姓名も身元も不詳の若さま侍、御用聞きの遠州屋小吉…
1954年(昭29)東京文芸社刊。1949年に発足した捕物作家クラブの中心にいた野村胡堂、土師清二、城昌幸、佐々木杜太郎、陣出達朗の5人によるリレー形式の合作になる。合作による「伝七」物は新聞や雑誌への連載でしばらく続いたが、1953年から足かけ10年にかけて松竹と東映で13作の映画化が行われた。主演はすべて高田浩吉。その半数以上の原作が合作であり、今でも読むことができる。 「人肌千両」は映画化第1作で、上映に合わせて単行本として出版された。語尾を「です、ます体」で統一し、野村~陣出~佐々木~城~土師の順で執筆された。江戸を騒がす怪盗団「疾風」(はやて)に狙われ、脅迫状で千両箱を用意するように…
1957年(昭58)雑誌「小説倶楽部」桃園書房発行。新年特大号に掲載。 「伝七捕物帳」は映画化やテレビドラマ化される頻度が高かったせいか、知名度は高い。しかし当初は捕物作家クラブの作家たちによる共同企画で、合作だった。初出は京都新聞での連載だったが、映画化で封切になるのに便乗して、その原作を「小説倶楽部」に再掲載したようだ。作者名は、野村胡堂、城昌幸、谷屋充、陣出達朗、土師清二の5名の連名で、数章ごとにリレー方式で書き継いだと思われる。その名残らしいのが、煉瓦のつなぎ目のように物語の筋の飛躍やちょっとしたズレとして感じられるのは仕方がない。それでも錚々たる捕物作家のお歴々の筆致には確たるものが…