小説家(1882〜1963)。岩手県生まれ。 盛岡中学から東京大学法学部(中退)。報知新聞社に入社、政治部記者となる。そのころから胡堂の筆名で創作を開始。 1931年の「オール読物」創刊時に捕物帳連載を依頼され、「銭形平次捕物控」を執筆。「平次」は以後26年間つづき、長短あわせて382編という膨大なシリーズとなった。 「あらえびす」の名でクラシック音楽評論も行った。
黒門町伝七捕物帳 時代小説競作選 (光文社文庫) 著者 : アンソロジー 光文社 発売日 : 2015-08-06 ブクログでレビューを見る» アンソロジー作品『黒門町伝七捕物帳 時代小説競作選』を読みました。伝七捕物帳シリーズを読むのは、3年半くらい前に読んだ陣出達朗の『時代推理小説傑作選 伝七捕物帳 新装版』以来ですね。-----story-------------黒門町は上野・不忍池の畔にあり、将軍家ゆかりの寛永寺の門前にちなんだ町名といわれる。その地で十手をあずかるのが、遠山奉行のおぼえもめでたき名うての岡っ引、本編の主人公 、伝七親分だ。大衆文壇の巨匠たちの理想と遊び心が溢れ、銀幕の…
六一八の秘密:野村胡堂 1953年(昭28)偕成社刊。 1968年(昭43)偕成社、ジュニア探偵小説 第14巻 頭の切れる女子中学生の恵美子が探偵役として活躍する。前に読んだ胡堂の少女探偵物『金銀島』と同じように少女雑誌に連載されたものの同類の一つと思われる。女子探偵の恵美子とともに警視庁を退職した柳文平老人が協力して、怪盗団が次々と繰り出す凶行に対し、知略をもって対抗する。ジュニア向けながらも無惨な殺傷場面が多く、少年少女がここまで前面に出ることはありえないのだろうが、胡堂は派手なアクション場面を含めて描き切っている。 タイトルの数字「618」から連想するのは、ルパン物の名作「813」だが、…
三万両五十三次:野村胡堂、志村立美・画 1932年(昭7)3月3日~1933年(昭8)7月29日、「報知新聞」連載。 1948年(昭23)湊書房刊。 野村胡堂の長編小説の一つ。銭形平次のシリーズに比べれば知名度は低いが、昭和7年から8年にかけて報知新聞に連載されて人気を博し、映画化もされて親しまれた。 幕末の黒船来航期、高まる倒幕論を懐柔するために、老中堀田備中守は三万両を京都の公家たちの許に運ぶ計画を立てた。それを阻止して軍資金にしようと企む討幕派の志士たちに加えて、陽炎のお漣の盗賊団の一味、三万両の警護役を拝命した馬場蔵人、その彼を仇討目的で狙う武家の娘と下男、江戸の侠客などが複雑な利害関…
(北上川にて) 『銭形平次』は『銭形平次捕物控』の小説の主人公で、神田明神下に住む岡っ引き(注)の親分のことだ。かつて時代劇のヒーローとして人気があり、映画やテレビドラマになった。作者の野村胡堂(18821—963)は、この小説のシリーズで知られた作家だ。元々、岩手出身の新聞記者であり、クラッシック音楽にも造詣が深く、彼が書いた随筆(エッセイ)は含蓄に富んでいて、面白い。
金銀島:野村胡堂 1933年(昭8)1月~12月、雑誌「少女倶楽部」連載。 1942年(昭17)長隆舎書店刊、胡堂・防諜冒険小説名作選。 1950年(昭25)光文社刊、野村胡堂全集第5巻、痛快文庫。 1954年(昭29)偕成社刊。 戦前期に雑誌連載後、何度も再刊された少年少女向け冒険小説。野村胡堂の現代物は珍しいが、少年少女向けとしては他にもあるようだ。タイトルの「金銀島」は大航海時代から日本の近海に存在すると伝えられてきた全島が金の地金や砂金で覆われた島のことを指す。スペインの探検家セバスティアン・ビスカイノが日本に来航し、測量や探索を行ったが発見できない旨の報告書『金銀島探検報告』を残して…
新編銭形平次捕物控:野村胡堂 1935年(昭10)千代田書院刊。 1956年(昭31)河出書房刊、銭形平次捕物全集第2巻。 最近読んでいたのは「銭形平次」の長篇ばかりだったので、まとまった短編集も読んでみたいと思った。昭和10年に出版された「平次物」の第2短編集14篇の本が見つかったので通読した。(第22作目から第36作目まで) 胡堂の自序がついていて、書き始めて5年という油の乗った筆致が初々しく感じられた。この頃は子分の八五郎を「ガラ八」と書いていて、その後の「ガラッ八」よりも彼に対する態度にやや丁重さが感じられた。まず八五郎にやらせてみるという育成者的な視点もある。八五郎の性格描写、助手と…
池田大助捕物日記:野村胡堂 1953年(昭28)同光社磯部書房刊。11篇所収。 1952年(昭27)雑誌「読切倶楽部」一部掲載。 野村胡堂と言えば「銭形平次捕物帳」が代名詞のようになっているが、その外に「池田大助」の捕物帳のシリーズがある。この池田大助ものは戦後になってから書き始められ、雑誌「読切倶楽部」などに長期間連載されていた。全集10巻本に83篇が収められている。 池田大助捕物日記:野村胡堂、成瀬一富・画 主人公の池田大助は大岡越前守の屋敷の用人として抱えられているが、奉行所の与力や同心ではなく、あくまでも「手伝い用人」として御用聞きの源太親分や飴屋の仙太郎とともに難事件を解いていくとい…
風雲一代男 金忠輔:野村胡堂 1951年(昭26)湊書房刊。 1959年(昭34)川津書店刊。表題を「天竺浪人金忠輔」と変えている。 江戸中期、文化文政年間に実在したとされる仙台藩の浪人、金忠輔(こん・ちゅうすけ)の破天荒な事績を小説化したもの。金(こん)は仙台以北に散見する苗字で、現在では金野(こんの)という変形も多い。他に「今」「今野」もある。すでに江戸期から史伝のほか講談等でも語り継がれていた。野村胡堂も岩手県出身なので、この人物に興味を抱いた可能性がある。 藩士の武術を教える道場主によって殺された親の仇を討とうとしていた小娘を助けて、忠輔は仇討ちを成就させるが、身辺を追われる立場となり…
1950年(昭25)矢貴書店刊。新大衆小説全集第10巻所収。長篇を読むのは2作目となるが、事件の骨組みが最初の『娘変相図』と似通っていて、なかなか捜査の糸口が見えないのもむしろ平次たちの行動に緩慢さを感じた。未遂も含めて連続殺傷事件の被害者が多くなると、犯人の可能性は自ずと絞り込まれてくるのは明白だ。逮捕の際の有名な投げ銭の場面は効果的で緊迫性があった。☆☆ 国会図書館デジタル・コレクション所載。個人送信サービス利用 https://dl.ndl.go.jp/pid/1708093/1/88 挿絵は沼野青爾。
1950年(昭25)矢貴書店刊。新大衆小説全集第10巻所収。銭形平次物は長中短合わせて383篇にのぼるそうだが、まともに読んだのは今回が初めてになる。胡堂の文体は「でした、ました」という丁寧な語尾に特徴がある。傲慢な読者でも語り手がへりくだった姿勢に思えると素直な心情になる。 この作品は数少ない長編の一つで、江戸中の十八歳の娘たちの中から籤引きで当った者に千両を与えるという催事に起こった殺人事件を皮切りに、続出する殺傷事件や誘拐事件の謎に銭形平次と右腕の八五郎が追っていく。関係する人物の表情や感情の変化を丁寧に描写している点に味わいがあった。謎の組み立ても巧みで、犯人像がなかなか見えてこない上…