細く長く読んできた、『妻を帽子とまちがえた男』がいよいよ終盤にさしかかってきた。 昨晩、15章「追想」を読んでいて気になったことがある。 でもその前に。気になったことの長い前置きとして、この「追想」の内容を概観する。 この章で出てくる、C夫人という人物は、齢88才の老婦人で、老人ホームに住んでいる。 ある日彼女はなつかしい夢を見た。それは、彼女がアイルランドで過ごした子供時代の夢だった。 夢の中には歌が出てきた。 その歌は、彼女が子供時代、みんなといっしょに歌ったり踊ったりした歌だった。 ここまではいいのだが、 C夫人が目覚めたあと、その歌(音楽)はまだ、大きくはっきりと聞こえてくるのである。…