グーを作って、そいつを妻の臀部にメリメリと圧し当てる。そうでもしないと、どうにも痛くてきばってしまうのだという。 そんな急場へぬるっと場面が展開したのは、昼を過ぎたあたり。それまでは痛みも散発的で、助産師のおばさんは「まだ有効な陣痛ではない」と言って出たり入ったりしていた。「有効」とまでは行かずともけっこう「技あり」な陣痛なのじゃないかと思うのは浅はかな素人考えなのであろう。山を過ぎるとまた落ち着いて、昼食時にはいつも茶の間でかけているNHKを点けて、非日常の側にふれた時間をちょっとばかし此岸へと引き寄せてみる試みなどもしてみたけれど、私が「こりゃ見たことのない野菜だ!」とか間抜けた感嘆の声を…