もったいないお手紙を得ましたことで、 過分な幸福をどう処置してよいかわからぬふうでございます。 それをこんなふうに私は見るのでございます。 眺むらん 同じ雲井を 眺むるは 思ひも同じ 思ひなるらん だろうと私には思われます。 柄にもない風流気を私の出しましたことをお許しください。 とあった。 檀紙に古風ではあるが書き方に一つの風格のある字で書かれてあった。 なるほど風流気を出したものであると源氏は入道を思い、 返事を書かぬ娘には軽い反感が起こった。 使いはたいした贈り物を得て来たのである。 【源氏物語 13帖 明石(あかし)】 連日のように続く、豪風雨。 源氏一行は眠れぬ日々を過ごしていた。 …