五月の風に乗って、空を泳ぐこいのぼりを見るたびに、少しだけ立ち止まりたくなります。「ああ、もうそんな季節か」とつぶやきながら、心のどこかで胸がきゅっとする感覚。たぶんあれは、懐かしさと、ほんの少しの寂しさが混じっているのだと思います。 子どもの頃は、こいのぼりが上がるとなんだか誇らしくなりました。近所に負けない大きさだとか、吹き流しが長いだとか、そんなことで胸を張っていたのです。今思えば笑ってしまいますが、その誇りこそが子ども心の原動力でした。 けれど、いつの間にかこいのぼりを見上げる立場ではなくなりました。「買ってあげなきゃ」「片づけなきゃ」「ごはんどうしよう」そんな風に、親の目線でしか見ら…