印刷所。カタコト。不規則な音声。 「一部ずつだとこちらとしては、販売することはできないですよ」 「では、何部からなら取り扱ってくれるのですか?」 「最低で五十」 「では、その数字で。ああ、別の文章でも印刷をお願いします」 「失礼ですけどね、こんなに少なくていいんですか?」 「ええ、十分。私が届けたい相手には伝わりますから」 「そうですか、はあ」 「納得していませんね。そこまでの説明が必要でしょうか?」 「あ、いや、そのいずれ、また印刷するんだったら、いっそのことねえ、だってどう見ても少なすぎる」 「不特定多数へ向けた提供を省いた。特定に人物にだけ行き渡るような配慮です。大量に刷り上げたからとい…