中勘助7-夜歩く- 夜,星を見上げる中勘助の「沼のほとり」は,雑誌「思想」に大正十一年七月から連載されました。時期的には話題になった問題作「犬」が「思想7号」に載ったその年のことです。「沼のほとり」は,大正十年一月一日から始まる日記形式の作品です。形式にこだわらず素直に自由に書く日記形式は中勘助の得意としたところです。この沼というのは,中自身が大正9年から3年間に渡って移り住んだ千葉県我孫子の「手賀沼」のことを指しています。この時手賀沼は「北の鎌倉」と称されて,志賀直哉(大正4年~),武者小路実篤(大正5年~),瀧井孝作(大正11年~),杉村楚人冠(大正12年~),嘉納治五郎とその甥の柳宗悦(…