病苦にもだえる声が少し静まったのは、 ちょっと楽になったのではないかと 宮様が飲み湯を持たせておよこしになった時、 その女房に抱き起こされて間もなく子が生まれた。 源氏が非常にうれしく思った時、 他の人間に移してあったのが 皆 口惜《くちお》しがって物怪は騒ぎ立った。 それにまだ後産《あとざん》も済まぬのであるから 少なからぬ不安があった。 良人と両親が神仏に大願を立てたのはこの時である。 そのせいであったかすべてが無事に済んだので、 叡山《えいざん》の座主《ざす》をはじめ高僧たちが、 だれも皆誇らかに汗を拭《ぬぐ》い拭い帰って行った。 これまで心配をし続けていた人はほっとして、 危険もこれで…