必殺仕事人 → 必殺仕舞人 → 新必殺仕事人
人気時代劇「必殺シリーズ」第16弾。『新必殺からくり人東海道五十三次殺し旅』以来続く、非主水シリーズの定番となっていた旅モノの復活である。
1981年(昭和56年)2月6日より5月1日まで全13回にわたって放送された。
前作『必殺仕事人』が全84回の長丁場であったことに加え、必殺人気をお茶の間に復興させたことから、製作スタッフが本作品に寄せる意欲は並々ではなかった。そのためか、第1話は野上龍雄、工藤栄一コンビによる手堅い設定作りがなされており、その後は吉田剛、石森史郎らが設定を受け継ぎ作品を仕上げている。
本作品の特徴として、ストーリー全般に「女の恨み晴らし」が縦糸として設けられている。駆け込み寺の総本山である鎌倉・本然寺の依頼を受けた仕舞人・坂東京山一行は、全国各地にある駆け込み寺の尼僧とコンタクトを取り、弱い立場である女性たちの恨みを晴らすために行動するのである。
尚、坂東京山は先の必殺仕事人スペシャル『特別編 必殺仕事人「恐怖の大仕事」水戸・尾張・紀伊』でゲスト出演しており、藤田まこと扮する中村主水とも共演している。
企画段階のタイトルは「必殺くれない人」「京山殺し旅」。
第1話には『斬り抜ける』の楢井俊平と、『必殺仕業人』の赤井剣之介こと真野森之助の手配書が一瞬だが登場しているなど、遊び心を窺わせる。
本作品で作られた劇判は、後の非主水シリーズやテレビ東京系時代劇『付き馬屋おえん事件帳』を中心に大量に流用されている。
箱根八里は馬でも越すが
越すに越されぬこの世の峠
西が曇れば涙雨
東が曇ればうらみ雨
どうせこの世は生き地獄
かわって晴らそう女の涙
この世の苦しみ仕舞人
その昔、凄腕の女殺し屋”お京”として裏の世界を鳴らした坂東京山(京マチ子)だったが、今では殺しの道を引退し、諸国民謡手踊り一座の座長として、江戸で人気を博していた。
ある日、あまりに過激な演目から風俗紊乱、淫乱淫靡の罪により、奉行所の沙汰があるまで休業のお咎めを受けた京山は、自分達を監視するある尼僧の姿に気付く。
その尼僧・春海尼(宮田圭子)は、鎌倉にある駆け込み寺、本然寺からの使者であった。本然寺は寺社奉行管轄の駆け込み寺の総本山であり、弱い立場の女性の駆け込みが後を絶たなかった。
本然寺の最高位である老師・善行尼(原泉)と5年ぶりに再会した京山は、日本諸国を廻り本然寺本堂修復工事の勧進興行を打って欲しいと依頼をされるが、京山は善行尼の本心を看破。それは勧進興行を名目にした、全国殺し旅の依頼であった。その背景には、全国124ヶ所にある末寺の駆け込み寺に、救いを求めて駆け込む女の数は増えこそすれ、減ることはないという、女性が虐げられている悲しい現実があったからである。
「阿修羅の怒りと弥陀の慈悲。裏と表が結ばれてこそ、誠の往生をば仕らん。」
5年前、人の命を奪う修羅の道から抜け出し、芸の道に戻った京山であったが、今回の依頼に乗り気ではなかった。とりあえず、善行尼に言われるまま佐渡へ向かう京山一座一行。途中、国定忠治に足蹴にされていた渡世人崩れの直次郎(本田博太郎)を加えて越後の枕崎へ着いた京山は、駆け込み寺である長国寺へ。そこにいる晋松(高橋悦史)に出会うが、彼もまた本然寺が依頼した殺し屋の一人であった。
晋松は自分が愛した女・おこう(田島令子)が殺されたことが原因で、佐渡へ渡ることにトラウマを感じており、殺しの依頼を断るのであった。仕方なく、佐渡へ渡った京山は、佐渡の駆け込み寺である椀葉寺の尼僧・春草尼(新海なつ)に、今回の依頼の概要を聞かされ、依頼を受けるよう懇願されるが、それでもまだ心は決まらなかった。
佐渡奉行所へ興行の認可を受けに行った京山は、そこで意外な人物と出会う。15年前、芸者をしていた頃の京山の恋人、内田春之介(戸浦六宏)であった。今では戸塚修理と名を変え、佐渡奉行所の与力にまで出世しているが、その昔、自分の出世のために京山を陥れた極悪人であり、結果京山は他の侍に陵辱され、春之介との間に生まれたばかりの我が娘すら死に追いやられてしまったのだ。
やがて、晋松の愛した女であるおこうを死に追いやったのも戸塚修理であったことが判明し、京山と晋松は殺しの道に復帰。2人がかりで戸塚修理を仕置する。
偶然殺しを目撃してしまった直次郎であったが、京山の機転により殺し屋の仲間に入ることになる。
ここに、仕舞人一座の殺し旅が始まるのであった。
続編に『新必殺仕舞人』がある。
プロデューサー | : | 山内久司(朝日放送) 仲川利久(朝日放送) 桜井洋三(松竹) |
音楽 | : | 平尾昌晃 |
主題歌 | : | 「風の旅人」作詞:山口洋子/作曲:平尾昌晃/編曲:竜崎孝路/歌:本田博太郎 CBSソニー |
ナレーション | : | 中条きよし |
題字 | : | 糸見渓南 |
撮影 | : | 石原興 藤原三郎 都築雅人 |
照明 | : | 中島利男 林利夫 |
編集 | : | 園井弘一 |
助監督 | : | 都築一興 津島勝 水野純一郎 |
坂東京山 | : | 京マチ子 |
直次郎 | : | 本田博太郎 |
おはな | : | 西崎みどり |
善行尼 | : | 原泉 |
春海尼 | : | 宮田圭子 |
晋松 | : | 高橋悦史 |
話数 | サブタイトル | 脚本 | 監督 | ゲスト |
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1 | 恨みが呼んでる佐渡おけさ | 野上龍雄 | 工藤栄一 | 戸浦六宏・田島令子 |
2 | さんさ時雨は涙雨 ‐仙台‐ | 吉田剛 | 松野宏軌 | 森次晃嗣・高瀬春奈 |
3 | 織姫悲しや郡上節 -郡上八幡- | 保利吉紀 | 原田雄一 | 早乙女愛 |
4 | 江差追分母娘の別れ -北海道・江差- | 筒井ともみ | 原田雄一 | 仁和令子 |
5 | 津軽じょんがら嘆きのひと節 -青森- | 長瀬未代子 | 松野宏軌 | 吉沢京子・久保にしき |
6 | 花笠音頭は地獄で踊れ -山形- | 石森史郎 | 都築一興 | はしだのりひこ・高木二郎 |
7 | 丹後の宮津の嘆き唄 -京都・宮津- | 吉田剛 | 松野宏軌 | 佐藤万理・須賀不二男 |
8 | 坊さんかんざし買うを見た -高知- | 吉田剛 | 松野宏軌 | 藤木敬士 |
9 | 女泣かせた鹿児島おはら節 -鹿児島- | 保利吉紀 | 黒田義之 | 赤座美代子・亀石征一郎・田畑猛雄 |
10 | 身を投げ生きる安里屋ユンタ -琉球- | 長瀬未代子 | 原田雄一 | テレサ野田 |
11 | 秋田音頭は国盗り家老の冥土唄 -秋田- | 林企太子 | 原田雄一 | 千野弘美・早川保・山村弘三 |
12 | おちゃやれ節騙した男へ波しぶき -紀伊- | 石森史郎 | 井上梅次 | 浜田晃・竹井みどり・片岡秀太郎 |
13 | 深川節唄って三途の川流れ -江戸- | 石森史郎 | 井上梅次 | 二宮さよ子・片桐竜次 |