クラスや会社に必ずいる。地味で無口ではあるが、賢くて誠実な人物。余計なことはペラペラしゃべらないし、調子にのって踊らないし、オレがオレがとわめかない。しかし本質を生きているような人物。もちろん一目置かれる。長くみんなの記憶にも残る。「恋恋風塵」はそういう映画だ。家のテレビで鼻くそほじりながら油断して観ていると眠ってしまうかもしれないが、スクリーンで観ると違ってくる。セリフとセリフ、行動と行動の「あいだ」にこそ本質があるとばかり、スクリーンの静寂(しじま)に人間の豊かさが存在する。なにも起こらない映画⁉いやいやいやいや、いやいやいやいや。無言で心の硬いところをコンコンコンコンと蹴ってくる映画だ。…