出立の日の饗応《きょうおう》を入道は派手に設けた。 全体の人へ餞別《せんべつ》に りっぱな旅装一揃《そろ》いずつを出すこともした。 いつの間にこの用意がされたのであるかと驚くばかりであった。 源氏の衣服はもとより質を精選して調製してあった。 幾個かの衣櫃《ころもびつ》が 列に加わって行くことになっているのである。 今日着て行く狩衣《かりぎぬ》の一所に女の歌が、 寄る波に たち重ねたる 旅衣 しほどけしとや 人のいとはん と書かれてあるのを見つけて、 立ちぎわではあったが源氏は返事を書いた。 かたみにぞ かふべかりける 逢ふことの 日数へだてん 中の衣を というのである。 🍂🎼秋雨と共に(Aut…