前稿では,ジョバンニの家の前に植えられてある「アスパラガス」と「ケール」が,仏教だけでなくあらゆる宗教の宗派や教派の「死後の世界」を統一する「五輪塔」をイメージできると報告した。しかし,賢治にとって,全ての宗教の「死後の世界」や「理念」を統一しても「ほんたうの幸せ」が得られるとは思っていないようだ。科学者でもある賢治は,宗教に科学を取り込もうとした。本稿では,「五輪塔」の背後にある仏教理念が科学的にも解釈可能であることと,別の言葉で言えば賢治が宗教と科学を一致させる実験的試みがなされたことについて説明する。 1.「五輪」の科学的解釈 仏教では,前稿で報告したように「銀河宇宙」の「ほんたう(=真…