お題「人生で一番古い記憶」 人生でもっとも古い記憶は、幼稚園のお弁当の時間にまつわるものだ。小さな木の机を囲んで、友達と並んで座っていた。お弁当箱のふたを開けると、ふわりと母の作った卵焼きの甘い香りがした。 みんなが一斉に箸を手に取る中で、私は手を組んで目をつむった。「神さま、今日のお食事をありがとうございます」。家では当たり前の習慣だった。でも、そのとき私はふと気づいた。周りが静まりかえっている。そっと目を開けると、友達が私をじっと見ていた。 「なにしてるの?」と、隣の子が首をかしげた。 「お祈りしてるの」 「おいのり?」 私はうなずいた。説明しようと口を開きかけたけれど、何と言えばいいのか…