1. 過去に戻れない街で 「ナフサ(粗製ガソリン)が不足してプラスチックが作れなくなったら、 私たちはまた鍋をかかえて豆腐を買いに行く時代に戻るのだろうか。」 そんな素朴な思考実験が、ふと頭をよぎることがある。 私自身は鍋で豆腐を買った経験はないが、 昭和の商店街にあった大きな水槽の中で、 白い塊が静かに沈んでいた光景は、どこか記憶の底に残っている。 便利さと引き換えに失われた「暮らしの手触り」へのノスタルジーは、 石油化学の危機という文脈では、 一見すると“あり得る未来”のようにも思える。 けれど、結論から言えば、 私たちはもうあの風景には戻れないのだと思う。 現代社会の仕組み全体を過去へ巻…