敬体と常体 『日の名残り』 『わたしを離さないで』 『痴人の愛』 敬体で書かれた小説についてのメモ 敬体と常体 あれは「です・ます調」で書かれていた、とはっきり記憶している小説があります。童話や昔話を除いての話です。どんな文体だったかを覚えている小説はそんなには多くないのですが、敬体で書かれた小説として、それがとくに印象に残っているのは、お手本にしたからなのです。 私はエッセイのたぐいはだいたい「です・ます体」で書いていますが、一編の文章をすべて敬体で通しているかというとぜんぜんそうではなく、常体をまじえて書きます。これは意識的にそうしているのです。もっとも段落ごとにけじめをつけるとか、ある種…