「琵琶《びわ》は女が弾くとちょっと反感も起こりますが、 しかし貴族的なよいものですね。 今日はごまかしでなく ほんとうに琵琶の弾けるという人はあまりなくなりました。 何親王、何の源氏」 などと大臣は数えたあとで、 「女では太政大臣が嵯峨の山荘に置いておく人というのが 非常に巧《うま》いそうですね。 さかのぼって申せば音楽の天才の出た家筋ですが、 京官から落伍《らくご》して地方にまで行った男の娘に、 どうしてそんな上手《じょうず》が出て来たのでしょう。 源氏の大臣はよほど感心していられると見えて、 何かのおりにはよくその人の話をせられます。 ほかの芸と音楽は少し性質が変わっていて、 多く聞き、多…