島田雅彦さんの「時々、慈父になる。」は、そろそろ返却期限をむかえます。 さらっと最後まで目を通したのですが、全体としては小説家の家族の話という のが縦軸で、その時々のエピソードが横軸に配置されます。 先日に紹介した文豪古井由吉さんについての話題もそうでありました。 この他で目をひいたのは、島田さんを最初に大学教員に誘った後藤明生さんに ついての話題も印象に残りました。 「近畿大学の特任助教授の職は2002年度で辞することにした。大阪の思い出 は無数にあるが、常に脳裏をよぎるのは、わたしを大阪に呼んだ後藤明生の声と、 当時の京都の遊び相手、平野啓一郎の顔である。 後藤明生の訃報に接したのは199…