自分の場合、小説を読んで感動するのは主に「物語」と「文体」に依ってである。どちらか一方でも、自分の琴線に触れれば、素直に感動する。単純な人間なのだ。まあ別に「感動」といっても、泣いたり心が震えたり人生観が変わったり、というような大袈裟な意味ではなく、もう少しざっくりと、「感心」といった方がいいかもしれない。 「物語」で感動するというのは、つまるところ、ストーリーがよくできていて面白いという意味で、ミステリー小説を読んで、驚愕の真犯人が判明した瞬間などに感じる。多分、最もオーソドックスな感動の仕方ではないだろうか。この種の感動との最初の出会いは、恐らく、小学生の頃によんだ野口英雄の伝記だったと思…