池内了氏の江戸の宇宙論を読んだ。本書は志筑忠雄(筑の字の凡が卂になっているのが正しい字体)と山片蟠桃についての評伝である。山片蟠桃は名前になんとなく記憶があったが、志筑忠雄には全然記憶がなかった。しかし、志筑忠雄は鎖国論を翻訳した元オランダ通詞で、この鎖国論という本の名前から鎖国という言葉が生まれたのは有名な話だろう。この二人とも18世紀末から19世紀前半の人たちだ。 志筑忠雄 志筑忠雄は長崎の資産家中野家に生まれたが、オランダ通詞の志筑家の養子となった。17歳で養父の後を継いで稽古通詞になるが、翌年早々に病気であることを理由に通詞職を辞し、以降蘭書の翻訳・研究に没頭したという経歴の人物だ。志…