今月の歌舞伎座は「十八世中村勘三郎十三回忌追善」と銘打っての興行。渾身これ歌舞伎役者とも云うべき不世出の名優、十八世勘三郎を偲ぶ公演だ。月日がたつのは早いもので、もう十三回忌。還暦前で、これから円熟の芸を見せてくれると云う時期での早世は、惜しみても余りあるものであった。しかし息子である勘九郎・七之助の兄弟に加え、親戚筋である成駒屋兄弟を加えての大追善。息子や孫達が立派に成長してこれだけの興行を打てると云う事が、泉下の勘三郎にとってせめてもの餞であろうか。 夜の部は『猿若江戸の初櫓』で幕開き。江戸猿若、中村勘三郎家誕生の故事に由来する狂言だ。亡き十八世勘三郎が初演し、当代中村屋に引き継がれた家の…