夜の雲をさまりて月行くことおそし、といふ題を人のよませたまふ あまくもの たなびけりとも みえぬよは ゆくつきかげぞ のどけかりける 天雲の たなびけりとも 見えぬ夜は 行く月影ぞ のどけかりける 「夜の雲収まりて月行くことおそし」という題詠を求められ、詠んだ歌 天雲がたなびいているようにすら見えない夜は、空を行く月も一層のどかに見えることよ。 和漢朗詠集採録の漢詩 秋水漲来船去速(秋の水漲り来たりて 船の去ること速かなり) 夜雲収尽月行遅(夜の雲収まり尽くして 月の行くこと遅し) を踏まえての詠歌。玉葉和歌集(巻第五「秋下」 第675番)にも入集しています。 遊び心で、この漢詩の情景をメジャ…