「御所などへあまり長く上がらないで気が済みませんから、 今日私ははじめてあなたから離れて行こうとするのですが、 せめて近い所に行って話をしてからにしたい。 あまりよそよそし過ぎます。こんなのでは」 と源氏は夫人へ取り次がせた。 「ほんとうにそうでございますよ。 体裁を気にあそばすあなた様がたのお間柄ではないのでございますから。 あなた様が御衰弱していらっしゃいましても、 物越しなどでお話しになればいかがでしょう」 こう女房が夫人に忠告をして、病床の近くへ座を作ったので、 源氏は病室へはいって行って話をした。 夫人は時々返辞もするがまだずいぶん様子が弱々しい。 それでも絶望状態になっていたころの…