「春雨けむる山里」と言う小学生の習字を掲げた小さな駅 私の大好きな詩人のひとり、田中冬二(1894年~1980年)。 この人の作品はどれも、詩ではなくてもはや絵だ。言葉という筆を使った絵画。どうして詩から風景が、においが、風が、感じられるんだろう? この駅の光景が、ありありと想像される。田舎の駅の、あの感じ。外はのどかな春、少しさびれた無人の小さな駅。昼間の利用者といえばおばあちゃんと子ども、習字の掲示の下で座っている。電車はまだ来ない、スズメの鳴く静かなホーム。遠くから踏切の音がして、ふたりはホームに進む。電車がゆっくり近づいて、駅の桜は風でゆらめき…。(私の想像です) 『枕草子』の空気を、…