もう一つ,「 自己啓発セミナーの危険性」論文を紹介しておこう。この論文が「主体の他者依存性」概念のもつ批判力を表現しているからである。自己啓発セミナーは,親との関係で獲得し内面化した道徳的禁止や理想が心理的問題を生み出していると考える。だから,問題解決のためには,禁止や理想の出自を主体自身が意識化しなければならない。そこでセミナーは,幼児期における親との関係を意識化させるために,エンカウンターなどの技法を用いる。実はこれらは精神分析の前提と方法でもある(精神分析では自由連想法や抵抗・転移の解釈を用いるという違いがあるが)。両者とも幼児期の禁止をいったん解除しようとするのである。しかし,この禁止…