短篇小説の略。短編とも表記する。
悪夢だ。外は急に暗闇に閉ざされ、雨音のしとしとという悲しげな音だけがぼくの耳に響いてくる。女の方に行こうとすると、床はぶよぶよとする感触がした。下を見ると無惨に切り取られた腕で、その腕は何かを掴み取ろうとするかのようにゾゾゾゾゾゾゾゾゾッと動いていた。 〈なん、なん、なんなんだ?〉 〈私の右腕よ、覚〉 ぼくが女を見ると肘から下がない。次の瞬間、パッと飛んで女の腕にくっついた。 女は残酷そうな高笑いをして〈おもしろいでしょぉぉぉぉぉ〉と言った。 廊下ではマネキンたちの狂気に満ちたパレードが始まり、遠くから太鼓やらなんかがガシャガシャと賑やかな音を撒き散らしながら行進した。 トロンボーンに合わせて…
醜い壁の自分、本から抽出された感覚が自立していく。そこでは虹が見えるんだ。ぼくはこの部屋に満ちる覚の声に身を任せる。そして自分が自分自身から離反していき細胞の一つ一つがこの小さな世界に革命を起こそうとして、覚がぼくの体に融合していくようだ。融合は加速していきぼくは生まれ変わる。 ドアが大きな風船の割れたような音をたててバンッと開いた。 〈覚、覚ぼくの覚、子守歌を歌ってあげる、覚、覚、最初から分かってたのよ、覚、覚〉 二メートルもあろうかというような太った山のような大男が葉巻を吸いながら混沌から現れて〈連れてってぇぇぇ、連れてってぇぇ、地獄の果てまで連れてってぇぇ、最後に笑って、覚ぅぅ、覚ぅぅぅ…
覚はノートブック・パソコンを打つのを止めた。そして神を嘲笑うように〈くそったれ〉と言葉を吐いた。口のようなところからどろどろの下水のようなどす黒い液体が溢れ出していて、それは悪を黙示していた。壁面全体から気分の悪くなるニオイを撒き散らして汚水のようなどろどろの液体が部屋中に流れ出していた。 〈来い〉と雷鳴のような声で覚は言う、〈おれの名前は……覚〉。 狭い部屋に怒涛の疾風が吹き激しく頬を叩いた。それは黙示だった。すべての覚醒を促す啓示なのだ。一瞬にして静寂が訪れ、ぼくのまわりを支配した。 閉ざされた小さな窓を開けようとすると、カタカタと音がして、窓枠の釘で指を切って血が滲んだが窓は開いた。 ま…
昨今の治安悪化で、日本に無差別殺人が増えたせいか、「殺され損」を訴える人が出てきて、2029年に『復讐法』が制定された。 家族を殺されて復讐したい人は、政府に復讐申請を出し、受理されれば復讐できるようになったのだ。 ただ、復讐は連鎖を産む。 たとえば、兄を殺されて復讐を決意した弟は、殺人犯に復讐するが、その殺害を不服に思った家族がさらなる復讐を重ねる…という具合いに。
その日、俺に『黒崎金融殺人事件』についての、陪審員通知が届いた。 俺は驚いた。被害者は、なんと俺が殺した男だったからだ。どこかのマヌケな野郎が、俺の代わりにつかまっちまったらしい。
「あなたのクレジットカードが、詐欺グループから見つかりました」 とうとう来たか!いつか俺も、こんな詐欺にあう日が来ると思っていた。 最近、流行っているのが、警察官を語り、現金を騙し取る手口。
ある日突然、メールアドレスとパスワードを変更されてしまう「アカウント乗っ取り」。 ニセのサイトに誘導されてしまう「フィッシング詐欺」に引っかかった可能性があります。 乗っ取り犯はあなたのアカウントを使い、様々な詐欺行為をします。
携帯電話に「ご当選おめでとうございます!」というメールが届いた。 何かに応募した覚えはなかったが、当選というのが気になって電話してみた。 「当選のメールが届きましたが、何が当たったんでしょうか?」
「引き寄せの法則」と言えば、どちらかと言うと「幸福」と思われがちだが、僕の場合、引き寄せるのは“不幸”ばかりだった。 ちょっと不安なことが頭に浮かぶと、不幸のほうから僕にすり寄ってくる。
★ 朝から立命館宇治中高の塾対象説明会に出席する。何年ぶりかで校内見学もさせてもらったが、施設といい、設備といい、職員の対応といい、公立に勝てる要素はない。 ★ 授業料が実質無償化されるとはいえ、保護者が支払う費用は授業料だけではない。結局、そこそこの財力がないと私学には通いづらい現実は変わらないが。 ★ 公立校でも特別な進学校(京都でいえばいわゆる御三家)や、私学で扱いたがらない学科(農業など)をもつ高校はそれなりに生き残れるかも知れない。しかし、特徴のない普通科(政治的な配慮ー市町村の思惑ーで存続しているような高校は淘汰される運命にあるようだ。 ★ さて今日は、乃南アサさんの「すずの爪あと…